第15回高校生ラップ選手権が終わった。今大会は優勝経験者やすでに全国的に名の知れたラッパーが多く参加。その中でも前評判の高かった00世代の百足が優勝をかっ攫った。
この記事では第15回高校生ラップ選手権の試合結果と内容をレビューする。ラッパーの情報は第15回高校生RAP選手権出場MCまとめで記事にしています。
一回戦結果
Novel Core VS FAMOU$
3大会ぶりに高校生ラップの舞台に戻ってきたNovelCore(CoreBoy)は当然の優勝候補。一方三度の落選を経て初出場となったFAMOU$。先攻のNovel Coreは聞き心地のいいラップと相変わらずの硬い韻で観客をアゲる。FAMOU$は即興性の高いラップで対抗するが、イマイチ波に乗りきれないままNovelCoreの勝利となった。NovelCoreの1ヴァース目「お前ら若手のへなちょこラップにこの大会任せられるわけねぇからな」が刺さった。
(勝利) Novel Core VS FAMOU$
MOGURA VS MCリトル
NovelCore同様に久々に高校生ラップに帰ってきた人気MCのMOGURAの相手は2大会連続出場となったMCリトル。
冒頭にMOGURAが吐き捨てた「慶応に受かって帰ってきたぜ」はキラーワード。スタイルが少しDOTAMAに似てきたようにも思う。MCリトルも”言トゥザ”節で韻をハメていくが、空気は終始MOGURA寄りだった。延長にはなったが相手の嫌がるディスと高校生離れしたボキャブラリーの豊富さが際立ち、MOGURAが余裕をもって一回戦通過。
(勝利) MOGURA VS MCリトル
Lil bei VS 無欲
アイドル好きvsアニメ好きのオタク対決となったこの試合。お互いキャラの立ち具合はトップクラス。無欲のファッションセンスの高さに驚く。バトルは先攻の無欲がいきなりアイドルファンディス(笑)。「2次元は嘘をつかないんだよ」でR指定が爆笑していたのが印象的だった。対象的にLil beiはあえてリズムをずらしながらも間延びしないクールなラップを披露。(表現勝負)VS(内容勝負)という構図だったが、3対2で際どくLilbeiの勝利。個人的には一回戦のベストバウトだった。
(勝利) Lil bei VS 無欲
藤KooS VS 我琉
優勝候補の藤KooSは明らかに場馴れしていた。負けるなんて思ってもいないようなアティチュードで先攻をかます。バトルは藤KooSが我琉のネタを指摘。我琉はアンサーすることなく2ヴァース目もネタっぽいラップを続行。ラップの完成度的にも内容的にも藤KooSの完勝となった。
(勝利) 藤KooS VS 我琉
百足 VS ZERO-CORE
NovelCoreと共に優勝候補の第一線を張る百足。藤KooSと同じく、同世代では圧倒的な場馴れ感を感じる。1ヴァース目から観客をブチ上げた。盛り上げ方、魅せ方を知っているなという印象。一方ZERO-COREのラップもオリジナリティがあり既視感がなく好印象。延長になったが百足の引き出しの多さが光り、危なげなく勝利。
(勝利) 百足 VS ZERO-CORE
hMz VS Loco Frankkiss
センス抜群渋すぎなhMzとFrankkiss Baby!!の対決。番組的にもいいマッチアップだったのではないか。
お互いが個を主張した試合だったが、hMzのラップはバトルというよりLIVEっぽく終始。試合という意味ではLoco Frankkissに軍配だった。hMzは抜群に格好良かったがやはり音源向きか。Loco Frankkissのキャラは愛せずにはいられない。
hMz VS Loco Frankkiss(勝利)
LEM VS 韻マン
自分のスタイルを確立させすでに圧倒的にファンを付けている韻マンが登場。とにかく、韻、韻、韻。自分が気持ちよく感じる韻を踏みまくる姿は、音楽を楽しむ純粋な形だ。LEMは悪くはなかったが既視感のあるラップで、韻マンのスタイルがより際立った。危なげなく韻マンが一回戦突破。
LEM VS 韻マン(勝利)
ベル VS HARDY
ニガリ以来の二連覇を目指すHARDYとすでに全国的にも名のしれたベルとの対決。バトルはハーディが胸を貸すようにベルのヴァイヴスに対してヴァイヴスで返す勝負となった。結果的にはその戦い方が失敗だったかもしれない。圧倒的な熱量の中にもより対話性を重視したベルの返しが刺さり、観客を爆上げさせた。HARDYにとっては悔しい敗戦となってしまった。
(勝利)ベル VS HARDY
二回戦結果
Novel Core VS MOGURA
二回戦第一試合は難しめなビート。MOGURAの「仮面ライダーのオープニング?」「変身しようとしてるのかな?」と強烈な音源ディスから始まった。NovelCoraもアンサーはするがMOGURAの攻撃力の方が高かった。
「もう気付いてるぜ会場の奴は。人としてお前は下位層のラッパー」
強烈すぎる。疑惑の「もう一回」だったが、延長でもMOGURAは観客の気持ちを代弁し続け、審査員はMOGURAに旗を上げた。NovelCoreは消化不良といったところだったか。この試合はモグラのラップの完成度が高すぎた。
Novel Core VS MOGURA (勝利)
Lil bei VS 藤KooS
ズラしたラップと高速ラップで序盤から藤KooSがスキルを見せていく。一方Lil beiも気持ちよくヌルヌルとラップをのせていった。しかしお互いの実力から言えば内容は微妙だったか。Lil beiの2ヴァース目は単調さが出てしまい結果に響いてしまった。バトルにおける引き出しの多さが勝敗を分けた印象。
Lil bei VS 藤KooS(勝利)
百足 VS Loco Frankkiss
禁断の惑星がバトルビート。先攻のLoco Frankkissは「本気でやってる奴をおちょくりにきてるんだよ」とキレキレ。一方百足も「ナルシストらっぱー、黙れよバカ」と応戦。
見応えある試合だったがラッパーとしての実力は百足が上だった。Loco Frankkissは最後に「Say!フランキス!」でしっかり爪痕を残す。ナイスギャグセンス。
(勝利) 百足 VS Loco Frankkiss
韻マン VS ベル
相変わらず死ぬほど韻踏みまくる韻マン。相変わらずヴァイブスをぶつけまくるベル。まさにスタイルウォーズだった。この試合に関しては勝敗にあまり意味はないのかもしれない。
ベル「韻ばっかでなにもつまらねえ。血液は流れるけどコイツのラップじゃ心臓はバウンスできねえんだよ」
韻マン「じゃあ逆に心臓ドロップさせてやるぜ。もしくはデンプシーロール。渡れよ点字ブロック。天罰下す天空神ホルス。アーイ…」
どちらも極端に振れたスタイルで面白い。当然延長になるが、お互いスタイルを崩さず。圧倒的な韻の中でもしっかりディスを織り交ぜた韻マンが結果的に勝利。ベルもめちゃくちゃカッコ良かった。
(勝利) 韻マン VS ベル
準決勝
MOGURA VS 藤KooS
準決勝第一試合は内容重視の勝負となった。ここまで”対話”に徹したバトルは高校生ラップでは珍しいかもしれない。当然の延長。かと思われたが審査員長考の末フジコースが僅差で勝利。大人の事情で延長できなかったか。
お互い決め手がなかったとも言える試合だったが。フジコースのノリノリなラップは見ていて清々しかった。MOGURAはこの大会を通じて株を一気に上げたのではないか。ぜひこれからもラップを続けてほしい。
MOGURA VS 藤KooS(勝利)
百足 VS 韻マン
出場者の中で圧倒的にファンの多いMC同士の戦い。観客の声の大きさは他の試合と比較にならない。
百足「帰るときこいつのラップ覚えてないぜ」
韻マン「客も覚えてるぜ、ほんのちょっとだけ」
レベルの高い掛け合いだったが、やはり韻マンを審査するのは難しいか、延長に突入。延長で使用されたのは難度の高いビート。これが勝負の結果に影響した。先攻のワンバース目、素人でもわかるほど百足がヤバ過ぎるほどうまくビートに乗る。一方の韻マン。シンプルな低音のみのビートの上では、韻を重ね続けるだけでは空虚な印象がしてしまう。
しかし最後までスタイルを崩さない韻マンは流石だった。延長でラッパーとしての完成度を見せつけ百足が決勝へ。今大会のベストバウトだった。
(勝利) 百足 VS 韻マン
決勝 藤KooS vs 百足
決勝は00世代の二人が顔を合わせることになった。ビートは般若の『最ッ低のMC』。お互い譲らず、高いスキルを披露したが内容はあまりなかった試合だった。それでも流石のライミングで百足がより観客を盛り上げ、満場一致での優勝となった。
優勝者 百足 準優勝 藤KooS
編集後記
今大会は前評判通り、上手い韻、気の利いたユーモア、リズムキープ、ラップスキルは過去最高峰の大会だった。昔みたいにお経のようなラップをするMCはもう本戦にいない。
一方でスキルが上がってくるほど、良くも悪くも人間性が際立ってくる。バックグラウンドや思想はラップに出る。そしてそれはラップスキルとは全く関係なく、その人の生き方によって醸成されるものだ。
高校生ラップ選手権はあくまで”高校生”の大会。観客は”今”だけでなく、その先を想像する。
呂布カルマは「俺は大人になってからマイク握った」と言った。ビッグアーティストは一廉の人間でなければならない。