大阪のおばはんの井戸端会議を潜入調査したら会話のほぼ100%が無駄でしかないことがわかった

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土曜の昼下がり。馴染みのある喫茶店へ本を読みに出かけた。

昔からあるレトロな喫茶店。中は広い。

適度な音量でジャズが流れていて居心地がいい。

だが今日は少し騒がしい。なぜだろう。

辺りを見渡すといつもより女性客が多い。

3人組のサラリーマンと大学生らしき2人を除くと他は中年女性のグループだ。

なるほど主婦は土曜日の午後に時間をもてあそぶのか。

喫茶店のなかが少しいい匂いがするのも香水のせいだと気付いた。

ぼくが腰掛けている席の横でも8人の女性がテーブルをつけ、ぺちゃくちゃ話し込んでいる。

楽しそうに喋ってるな。そう思ってぼくは本を読み始めた。

ページを10回くらいめくったとき、横の声がだんだん大きくなってきた。

「ゆうや君、こどもできたんやって」

「えー彼女に?」

「知らんの?」

「できてん、1ヶ月前くらい」

「うちも知らんかったわ」

「有名やで」

「彼女どんな子?」

「鳥取の子らしい」

「へー」

「でもな、彼女やんちゃな子らしくてな」

「んー?」

「他の男の子と遊びまくってんねんてえ」

「えー」

「しかもなツイッターでその写真ばんばんあげるらしい」

「えーーーー(一同ハモる)」

「彼氏ええのそれ」

「知らん」

「絶対嫌やわ」

「ちゃんと報告してんと違うん?」

「してないでしょー」

「しらんけど」

「どうなんそれー」

「そういうのちゃんとやってほしい」

「別にいいけどなあ」

「えー、隠してほしいわ。上手にやってって感じ」

「騙してるかんじなるやん」

「そっちのほうがマシちゃう?」

8人の大阪のおばはん。誰ひとり聞き役に徹することなく全員が会話に参加している。ぼくは感心した。少し気をそらしていると次は誰かの娘の彼氏の話に変わっていた。盗み聞きを続けてみた。

「まだなんも挨拶ないねん」

「人によるで、そういうの」

「うんうん」

「いやでも来いやと思うわ」

「分かる あんたはうちの娘ほんきで幸せにする気あんのって」

「そうそう」

「結婚する気ないねんで」

「絶対そうやわ」

「そういう男はな、なんかあったとき責任取られへんねんで」

「てきとーよね物事に対して」

「うん浮気とかすんねん絶対」

「うーわ」

「最近の子はよう色んな子と遊ぶからな」

「せやねん、さっきの彼女みたいな」

「うんうん」

「なんか乱れてるよね」

「1人の女の子と長く付き合うって文化がないよね」

「そうなんかな」

「好きって感覚あんたら分かってんのって思う」

「中学のときとか苦しんでないんやで」

「あー、わたしむちゃ恋愛してたけどなあ」

「なんかこわいな」

「たしかにー」

一応皆さんに伝えておきたいのは、メイントピックとなる会話の軸は2〜3人のBBAが形成し、他のBBAがそれに追従しながら別の話題をくっちゃべってるということだ。この話についていきながらも隙あらば横の友達と、「旦那の趣味が競馬で辞めさせたい」、「最近物忘れが激しい」、「ツイッターしてる人は絶対マメ」、「息子が就職した」みたいな話を同時進行でしている。なんと高度なコミュニケーション。少し感心してしまったが、やはり傍からすれば同時多発テロだ。あ、また話題が変わってる。

「圭太うちに連れてきたで彼女」

「おおどやったん」

「可愛い子やったよ」

「真面目そう?」

「うんそんな嫌な感じじゃない」

「へーよかったやん」

「そうそう」

「あれやで注意しいや」

「なになに?」

「5秒ルール」

「なによそれ」

「急に部屋のドア開けたらあかんで」

「あーそういうことな」

「トントンしいや」

「ほんまやな」

「階段もドスドス登らなあかんで」

「なるほどなー」

「わたし中学のときそれあったわ」

「えーー(一同ハモる)」

「バレへんかったけど危なかった」

「見られてないんかい」

「ギリやで」

「見られたら終わってたな」

「5秒ルール大事やでちゃんとしいやトントンしてから」

「そうするわ」

「どこ泊まったん」

「下の部屋」

「別々?」

「うんそらな」

「そらそやろ」

「こないだまで鬼ごっこしてあそんでたのになあ」

「はやいでほんま」

「どこ遊びに行ってるとか知ってる?」

「なんかエキスポシティ行った言うてた」

「あー人すごいやろ」

「しらんけど スケートも行った言うてたな」

「へーー」

「なんでそんなん知ってるん」

「うちも全然教えてくれへんでそんなん」

「なんか言うてくんねん」

「わたしも聞いてみよかな」

「たぶんうそつくで」

「うん」

「2人で泊りとか行ってんのかな」

「行ってるやろ」

「行ってる」

「一応禁止にしてんねんけど」

「うそついて行ってるよ」

「前はちょっとは教えてくれてんけどな 聞きすぎてなんも言わんくなった」

「ほら」

「そうなるよ、だから黙ってんねん」

「逆にあんたんとこは知りすぎやけどな」

「圭太?」

「うんせやな」

「珍しいで」

「でもみんなで行きやーと思うけどな」

「泊り?」

「うん みんなで遊べばいいのに」

「でも圭太くんかわいいはほんま」

「うん、おにいちゃんかわいい」

「なんでやねんぶつぶつの顔やのに」

「優しいしなあ」

「圭太くん見守り隊つくろ」

「つくろ」

「いらんわそんなん」

大阪のおばはんの井戸端会議に潜入調査したら「圭太くん見守りたい隊」が発足されたことがわかった。

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