ひきこもりが勇気出して友達の結婚式に行ってきた


ぼくは今27歳。

25歳のとき、

2014年の10月くらいから1年間と少しの間、

ぼくは家から一歩も出られない引きこもりになった。

大学時代の友達。海外旅行。

ぼくが大学に通っていた頃、親しい仲の友達Kがいた。

だいたい馬鹿話しかしない間柄。

1つ年上で映画好きのやつだった。

写真や映像を撮るのが上手で、日常のなんてことはない風景を撮影してはYouTubeとかブログに載せていた。

小中高とサッカーしかしてこなかった僕にとって、彼はとても興味深い存在だった。

3年生の夏休みにみんなでハワイに行くことになった。ぼくは課題で忙しくて旅行の計画を全部人任せにしていた。

旅行当日、空港まで誰かの車で行くことになった。

海外旅行を心待ちにしていたぼくはテンションが高い。

車内ではるるぶ片手に、宿泊予定のホテルの情報や、面白そうな観光地の話で盛り上がる。

友達の一人が「あ、パスポート…」と言い出した。

リュックの中を探しても見当たらない。

割と致命的なミスだ。

可哀想に。そいつはハワイ行けないな、とぼくは思った。

すると、誰かがこんなことを言い出した。

「え、あかんやん」

「取りに帰る?」

「いや、間に合わないやろ」

「ハワイはパスポートいるからなあ」

「そうやなあ」

「え、どうする?」

「どうするよ?」

「島根にする?」

「そうしよか」

「ええやん、島根」

旅行先がハワイ→島根県に変更になった。

この旅行は巧妙に計画された僕へのドッキリだったのだ。

パスポートを持っているのは馬鹿な僕だけだ。

結局、ぼくらは島根を旅行した。旅行は普通に楽しかった。

ドッキリに対してぼくはちょっと怒ったが、手間の掛かったドッキリだったのですぐ許した。

そしてKはその一部始終を動画におさめ、上手に編集してYouTubeにアップした。

ぼくはこんな遊び方をするKと友達が大好きだった。

大学を卒業してKはコマーシャルを制作するような会社に就職した。

彼は社会人に、ぼくは引きこもりに

ぼくはというと、大学院に進学。修了してしばらくして引きこもりになった(⇒27歳ひきこもりはまだ人生詰んでない)。

将来への不安や人間関係から病んだのだ。

友達からの連絡はすべて無視した。

その頃のぼくは、メールが来ても、LINEが来ても画面を開くことさえできなくなっていた。怖かったのだ。

大学時代には対等な関係だったみんなが、

ぼくの知らない世界で一生懸命働いている。

そんな中、ぼくはニートで引きこもり。

胸を張って彼らと会話することなんて当時のぼくにはできなかった。

ぼくは自殺を考えていた。

半年もみんなからの連絡を無視すれば、もうほとんど携帯が鳴ることはなくなった。

もうぼくに友達はいなくなった。

とても悲しかったけど、それが楽でもあった。

もう誰かと比べたりしなくて良いから。

Kからの電話。メール。LINE。フェイスブック。

携帯が鳴らなくなって数カ月後、 久々に電話がなった。

Kだった。

当然、無視した。

1週間後。Kからメールが来ていた。

「元気か?」

また無視した。

1ヶ月後。次はLINEで

「大丈夫か?」

とメッセージが来た。既読はつけない。

また1ヶ月後。フェイスブックで

「元気か?」

とメッセージが来ていた。

ぼくの今。Kの今。

友達からの連絡、Kからの連絡をシャットアウトして1年ほど。

ぼくは少しずつ元気が出てきた。

なにかしようと思ってこのブログを始めた。

ブログをスタートして1ヶ月したころ、体調が少しずつ良くなった。

まずフェイスブックで友達の写真を見ることができるようになった。

1年間溜めたLINEのメッセージに既読を付けることができるようになった。

家の外にも出れるようになった。

ちょっとずつ誰かと会いたくなってきた。

ぼくはKに返信してみた。

「ごめん」

「おう。元気か?」

「うん元気。ありがとな。」

「おう。」

これ以上ない淡白なやりとりだった。

しばらくしてKから結婚式の招待状が来た。

迷った挙句、ぼくは勇気を出して、参加に丸をつけて葉書をポストに入れた。

ひきこもりが勇気出して友達の結婚式に行ってきた

先日、Kの結婚式があった。

奥さんはとても綺麗な女性だった。

2人は幸せそうだった。

死ななくて良かったとぼくは思った。

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