なめくじは植物の葉や花、つぼみ、茎を食します。紫陽花、薔薇、マリーゴールド、ペチュニアなど、他には野菜(キャベツやレタス、きゅうりなど)を好んで食べるようです。
湿気を好み、雨の日や夜間に活動します。梅雨の時期によく見かけますが、最も食欲旺盛になるのは秋です。雨が続くと大量発生し、庭の植物を食べるなど害を与えてしまうこともあります。
造園会社で働き始めて2週間が経った。人見知りなぼくは1日中ずっと緊張しっぱなしだ。
ある雨の日のこと。時刻は18時になろうとしていた。帰り支度をしている途中で1人の職人さん(仮名:Rさん)に呼び止められた。まだ話したことのない50代くらいの職人さんだ。
「おいお前。こっちこい」
ビクッとして咄嗟に、「はいっ!」と返事をした。職人さんは軽トラの脇に立ち、真っ直ぐな目でぼくのことを見ている。
嫌な予感。小走りでRさんのもとに駆ける。軽トラのうしろに辿り着き、要件を聞いた。
「どうされました?」
Rさんは真っ直ぐな目のまま静かにぼくに言った。
「おい。これ」
指先は軽トラの荷台を指さしていた。
ぼくもすぐにそちらに目を移す。
「え……ん?…..」
「…でかっ!!」
「せやろ」
なぜか偉そうだった。
そこには見たことのないほど巨大なナメクジがいた。立派な触覚とマダラ模様。全長はざっと17〜18cmでちょうど指先を広げた手のサイズくらいだ。陸上のリレー協議で使うバトン位の大きさはある。
「デカいですねえ。こんなん見たことないですわ」
そこから、近くを若手が通るたびにRさんは声を掛け始めた。
…
「おい」
「はい!」
「こっちこい」
「はい!」
「これ(スッと指をさす)」
「ん?なんすかこれ!!」
…
「おい」
「はい!」
「こっちこい」
「はい!」
「これみい(スッ)」
「なんすか?…気持ちわるっ!」
…
「おい」
「はい」
「こっちこい」
「はい」
「これみい(スッ)」
「うわ。。」
「お前反応悪いな」
…
知らない間に中年の職人さん2人がその輪に合流し、大人7人が輪になって軽トラの荷台を囲んでいた。その中心には1匹のナメクジがいる。そこではなんの生産性のない話が繰り広げられた。内容を以下に羅列する。
—
- 大人7人集まって誰も見たことないんやからこれは最大級のナメクジや
- これは亜種やな
- 絶対に塩かけんなよ
- お前(若手)スマホの便利なやつ(グーグルレンズのこと)で調べろ
- 塩かけたら普通サイズになるんすかね
- 意外とええ値段で売れるんちゃうか
- 明日の朝までいるか賭けるか
- お前(若手)このなめくじ肩に乗せとけばええやん
- お得意さんに「肩になめくじ乗せた子」で覚えてもらえ
- さっきお前触ったから、明日からヌメヌメなってくるで
- コイツずっと観てられますわ
- ここまで大きいと飼いたくなるな
- でも保護しとくほどのもんちゃうな
—
みたいな会話が30分ほど続いた。
辺りも暗くなり、解散になった。
帰る頃には僕の身体の緊張は解けていた。
てかなめくじってなに食べんの?